ずいぶん堅苦しいタイトルを付けてしまいましたが、そんな難しいことを書くつもりはありません。
正論、つまりテキストに載っているような理論と、現実論、つまりおかれた状況の中で許されるであろう妥協案とでどちらがマンション管理に大切なのかを考えてみたいと思います。
トラブル発生時のことを考えてみます。マンション管理士にとって、実は無法者の対応については大して難しくありません。管理規約や法律に則って淡々と処理するだけです。
難しいのは、当事者が2名以上でどちらの言い分も一理あり、落とし所を探らなければならない場合です。
こちらのケースが相談のほとんどですが、この場合役に立つのは現実論なのです。
正論では杓子定規な対応となり、相手の逃げ場を奪ってしまいます。結局相手を感情的にさせ、後にしこりを残してしまいます。
例えるなら経済学と経営学のようなものです。数学を使って正解を求める経済学に対し、経営学はヒトやモノを追い求めています。
また、私は発言するとき、常にどの程度の現実論をお話しするべきかを考えています。
もちろん教科書通りの答えをお話し、それで喜んでいただけるのであれば正論をお話しますが、今は皆さんかなりの知識をお持ちの方が多く、私に求められているのはテキストや法律の解説ではないと思うからです。
例えば、管理規約が平成14年の区分所有法改正以前の表現のままになっている、せめてその部分だけでも改正した方がいいか、と問われた場合、このマンションは大規模修繕も建て替えもまだまだ先だからしなくてもよいのではないですか、などとコメントしてしまいます。将来の規約見直し時に併せてその部分を改正すればよいと思うからです。
それでも相談者は今改正するべきとアドバイスしてほしいのではないか、いい加減な印象をもたれてしまうのではないか、などとは思いますし、解説しすぎるのも肝心の要点がわかりにくくなるのではないか、など頭の中はスパイラルです。
相談者の中にはルールを厳格に遵守させることが全てのように強行な態度で私に同意を求めてこられる方もおられますが、その様な方は大概私の反応に失望し、離れていかれます。
人の行動は経済学のような理論どおりには展開しない、だからマンション管理についても完璧な対応などありえない、70点取れれば御の字ではないですか。
これが私にとってのマンション管理像です。
[2008年1月20日]