旧耐震基準(昭和56年5月以前の建築確認)で建設されたマンションでは、一度ぐらいは耐震診断の話題が出ているのではないでしょうか。
しかし、戸当たり10万円とも言われる診断費用を聞いて愕然とし、考えることをやめてしまう管理組合が多いものと思われます。
組合活動が活発なマンションにおいて、そろそろ耐震診断を検討しよう!ということになっても、コストの莫大さに加え、診断の後に控える耐震改修の費用など到底捻出できない、耐震診断の結果が悪ければ住人の不安が増大される、診断結果が悪く資産価値が下がったら目も当てられないetc・・・などといった意見が噴出し、実施の先送りが繰り返されることが多いように感じます。
ちなみに、マンション比率が高く行政も熱心で、地震に対する切実な危機感が強いと思われる東京都内の分譲マンションでさえ、旧耐震物件のうち、わずか2割しか耐震診断を実施していないそうです。
何故なのでしょう?上記の金銭的、心理的なハードルに加え、理事会制度の仕組みにも原因があると言われています。マンションの理事会は1〜2年でメンバーが交代するため、耐震診断から改修といった長期的課題を検討しづらい組織になっているのです。
目先の日常的な問題解決で手一杯で、地震といった、いつおきるかわからないテーマまで手が回らない、それに、大規模修繕などと違ってきれいになったり、便利になったりするわけでもありません。後回しになるのは、ある意味仕方のないことだと思います。
では、耐震診断について管理組合はどのように捉えればよいのでしょうか。
私は、耐震診断を「攻めの管理」のひとつだと考えます。
日常的な組合活動は、小修繕やトラブルの解決などほとんどが守りの管理です。大規模修繕にしても、機能の回復という意味でほとんどが守りの管理と言えるでしょう。
旧耐震基準のマンションは、築年数が30年以上経過した今、マンションの将来像を積極的に構築する必要があります。つまり、攻めの管理です。
建て替えなのか、長命化なのか、今後の方向性をじっくりと本音で議論するのです。もちろん色々な価値観があるでしょうから合意形成には時間や苦労が必要です。
しかし、その合意形成の中でおのずから耐震診断と改修の選択肢が出てくると思います。
その結果、たとえ修繕積立金を値上げしてでも耐震診断や耐震改修をするのか、終末を決めるのか、建て替えなのか、ひいては区分所有者個々のライフサイクルを考えることにつながると思うのです。
[2012年8月9日]