大規模修繕などを実施する場合、総会で特別決議が必要なのか普通決議で足りるか判断に迷うケースが度々あります。
区分所有法第17条に、「共用部分の変更(その形状または効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決する。(後略)」とあり、工事の実施が形状または効用の著しい変更にあたるか、そうでないか、の判断が難しいということです。
先日(3月18日付)のコラムでもご紹介の通り、耐震改修などでは実際のところ、当事者では判断がつかず司法職の判断にゆだねる必要が生じるケースもあるわけです。
そんな悩ましい側面のある共用部分の変更(厳密には普通決議で足りる場合は「共用部分の管理」と言います。)ですが、どうも今年度中に決議要件の整理が進みそうな状況です。
平成24年5月10日、政府の国家戦略会議で、新成長戦略(H22.6月策定)の実施状況についてのフォローアップが実施されました。
その中で、実施が滞っている事業5項目のうち「老朽マンションの改修に係る決議要件の適用関係の整理」が1項目として挙げられたのです。
そこで今年度中に完成を目指す、という状況のようですが、このニュースを聞いての最初の感想が、なかなか進まないのは仕方がないだろうな、ということ。
法務省の担当部局がコメントしているように、「特殊な事例が多く、そのまま公表しても有用な結果にならない」からです。
実際に色々なマンションを訪問していて、マンション毎にそれぞれの歴史や文化があり、同じ様な事例でも絶対的な正解はないことを実感しています。それをひとくくりにするのは容易ではないな、と感じます。
そしてもう一つ感じることは、このテーマに担当部局はモチベーションが見出せないのではないか、ということです。
現状、それぞれのマンションで、もしかすると間違った決議要件かも知れないけれども、それなりに運用できている中で、今、決議要件の整理をするよりも先に取り組むべきテーマがあるのではないか、と感じるからです。
例えば、全国で滞っている建て替えの決議要件の見直しや老朽化や災害などで管理が立ち行かなくなったマンションの区分所有権の解消など、マンション関係の法整備は課題山積です。
決議要件の整理ができれば、総会運営上はメリットがありますので、もちろん賛成なのですが、個別性の強いマンションという社会土壌で、うまく進むのか、要注目です。
[2012年6月14日]