〜建物・敷地売却制度の創設へ〜
このコラムでも何度かテーマにしていますが、老朽化マンションの建て替えについて、また1つ選択肢が増えるようです。
2014年度税制改正大綱でマンション敷地売却制度が閣議決定されました。
これは、耐震性が不足する老朽化マンションで、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成により、敷地を売却できる制度です。
管理組合が自力で建て替えを進めるのではなく、マンションを売却し、買い受けたディロッパーなどが建物を解体、建て替えるという選択肢を認めることになります。
現在、建て替えに関しては建替え円滑化法が施行されていますが、この法律を改正し、その中で認定された老朽化マンションに対して、建て替えと同じ要件でディベロッパーへのマンションの売却を認める模様です。
現在、建て替えをしたくても追加費用の負担などで区分所有者間の合意が進まず、だからと言って敷地等を売却するにも全員の賛成が必要となるためそれもかなわない、といった身動きの取れていない老朽化マンションは全国に多数存在します。
この制度は、それらのマンションに対しては一筋の光が射すことになるでしょう。
とは言え、問題点もなくはないです。
この制度はそのマンションに住み続けたいという少数派を駆逐することになり(この決議が成立すれば反対者も強制買取となります)、今以上に区分「所有権」が軽くなってしまいます。
また、ディベロッパーが敷地に市場性がないと判断すれば結局この制度も「絵に描いた餅」となり、画期的な改善策とはならないでしょう。
考えてみれば、国も老朽化マンションの建て替えや耐震改修が進まないことに相当焦ってきている感があります。
ディベロッパーの存在は現在の建替え円滑化法でも想定されていますが、「所有権」にこだわるあまり自律的な建て替えというスタンスを崩すことはなかったように思います。
しかし、建替え円滑化法の改正、という形でこの制度を創設するということは、建替え円滑化法のスキームでは限界があると自ら認めることになり、ある意味、理想論をあきらめ現実的な対応を選択するように導いていると言ってるような気がします。
改正法を見てみないとわかりませんが、ディベロッパーが建て替えすることを要件に加えるのでしょうか?
解体後の用途にはこだわらないのであれば、敷地の売却先が広がると思われ、買い取り価格も多少は期待できることになると思います。
そうなれば、今、議論されている区分所有権の解消にも近くなり、閉塞感を持つ老朽化マンションには極めて現実的な対応になるような気がしますが、いかがでしょうか。
[2014年1月27日]