2012年も早1ヶ月が経過しました。
今年は1月4日の日経新聞朝刊の1面に、マンションを建て替えやすくするための関連法制を、政府が見直す方向との記事が掲載されたり、1月10日には、第三者管理に関する検討会の初会合が開催されたり、マンションを取り巻く環境が大きく変わる気配を感じます。
さて、今回は少し興味深い訴訟事例をご紹介します。
東京都内の管理組合が分譲業者を訴えた事例なのですが、その請求の中に、長期修繕計画の虚偽表示による損害賠償が含まれているのです。
具体的には、長期修繕計画に正しい費用が計上されていない(故意または見落としによる、いい加減な計画を作成している)ため、本来なら必要な費用、つまり計画より余分にかかる費用を損害として請求しています。
これは大変興味深い請求内容と言えると思います。
なぜなら、新築時に作成される(分譲業者が作成する)長期修繕計画は、中途半端なもの、いい加減なもの、というのがマンション業界の常識だからです。
はっきり言って、分譲業者は引渡した後のマンションの管理など全く考えていません。
どうすれば売れるか、利益が出るかがすべてであって、入居後は自分たちで好きなように管理して下さい、というのが彼らのスタンスです。
したがって、彼らの意識では、長期修繕計画などそもそも全ての費用をまかなう前提で作成されるものではなく、修繕積立金を算出する根拠となる参考資料に過ぎないのです。
訴訟は継続中の模様で、もちろん主張は真っ向から対立しているわけですが、管理組合側の主張が一部でも認められれば、多少は分譲業者の意識が変わっていくのでは?という期待が持てます。
管理組合理事長の話によれば、「プロが手抜きをしても『マンションとはそういうもの』とあきらめず、責任を問いたい」とのことです。支払った価格に見合った商品として、ハード部分だけでなく、ソフト部分に対しても品質を求めるというマンション分譲業界への警鐘となる行動だと思います。
個人的には管理組合側の勝算は高くない、と思いますが、決着を注目したいと思います。
[2012年2月2日]