これから重要度が高まりそうなマンションの耐震改修ですが、総会決議は普通決議でよいのでしょうか?それとも特別決議が必要なのでしょうか?
耐震改修は区分所有法では、「共用部分の変更」行為に該当し、形状または効用の変更が著しいか、著しくないか、で普通決議か特別決議かの判断が分かれることになります。
多額の費用がかかるし、住民にとって大切なことだからとりあえず特別決議を取っておこう、こういった管理組合も多いかとは思います。しかし、法的にはどちらの決議が必要とされているのか、以前、あるマンションで調査しましたのでご紹介します。
まずは最も身近な標準管理規約を見てみます。コメント欄の第47条関係⑤イに、「柱やはりに炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて補修する工事や、構造躯体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置する工事で基本的構造部分への加工が小さいものは普通決議により実施可能と考えられる。」と記載されています。
また、専門書であるコンメンタール区分所有法にも、「建物の安全性の保持は建物の適正な管理に必要不可欠であることから、(柱の下部を切断し免震部材を挿入する工法など)建物の共用部分の一部に著しい形状の変更が生ずるときであっても、建物の全体においては著しい変更には該当しないと見て、その工事の実施には過半数の普通決議で足りると考える余地があろう。」という記述があります。
確かに耐震改修は、効用(機能や用途)を大きく変更するわけではないですし、大規模修繕の延長と見る向きもありますから、(もちろんケースバイケースなわけですが)形状が大きく変更されなければ普通決議で可能という気がします。
しかし、実際はそんな単純な話ではないようです。
耐震化と建替に詳しい弁護士に面談し、話を伺ったところ、開口部にブレース(筋かい)を設置して形状が大きく変更され、専有部の眺望や日照に影響を及ぼす場合に加え、柱に炭素繊維シートなどを巻き付ける工法でも、その柱が専有部分に影響を与える場合は、特別決議に加え、その区分所有者の承諾が必要となる、とのことでした。
詳しくは省略しますが、結論として、住戸内の柱を補強する耐震改修は、特別決議プラス区分所有者が承諾しないときは工事できないのです。
やっぱり、耐震改修は、慎重に、特別決議を前提に検討したほうがよさそうです。
[2012年3月18日]