管理費等の滞納があって訴訟に移行するとき、管理組合にとって何とも歯がゆいコストがあるのをご存知でしたか?
それは弁護士費用なのです。管理費等の支払いは区分所有者にとって当然の義務ですから、訴訟そのものは100%勝つと言っても過言ではないのですが、弁護士費用については自己負担というのが法曹界の常識でした。
したがって、決して安価ではないこのコストは、滞納額によっては訴訟する意味がないということになり、悪質な滞納者に手を焼く組合も相当数ありました。
ちなみに標準管理規約に準拠している管理規約なら、弁護士費用を違約金として滞納者に請求できるという規定があるはずです。
ですが実際は全額ではなく、裁判所で負担額を算定することが原則なため、管理規約の規定は滞納者に対するプレッシャーに過ぎないという現実があったのです。
ところが、平成26年4月16日の東京高裁で、ついに管理組合が負担した弁護士費用全額および相当する法定利息の支払いを滞納者に義務付けた判決が出されました。
原審では管理組合側の請求を認めたものの、弁護士費用については実質負担額の約半分、50万円の請求のみ容認されていました。
それが高裁で全額容認です。しかも理由が気持ちいいです。
「区分所有者は当然に負担すべき管理費等の支払い義務を怠っているのに対し、管理組合は、その当然の義務の履行を求めているに過ぎないから、管理組合側が債権回収にあたり弁護士費用等の自己負担を強いられるのは衡平の観点から問題であり、不払いを自ら招いた滞納者が負担することは格別不合理なものではない。」
まさにその通り!
普段から滞納額の回収のため、手間をかけ、コストをかけ、気を使っているにも関わらず、それでも支払わない滞納者に対する弁護士費用が組合負担なんてどう考えてもおかしいですよね。
法廷の常識は一般社会の非常識などと揶揄されることもありますが、確かにあれ?っと首をかしげる解釈も多いのです。
この件に関しても常識のズレということで釈然としなかったわけですが、ズレの解消という意味で、一歩前進したのではないでしょうか。
今回のような判決が出るようになったことも、マンションというものが居住形態として確立されてきた1つの証だと感じますね。
[2015年6月6日]