今年はマンション標準管理規約を改正する年のはずです。
今年4月24日付のコラムでお知らせの通り、マンション標準管理規約見直しのため設置された国交省の検討会が2年ぶりに再開され、あっという間に標準管理規約の改正案をまとめ上げました。
この改正案は5月頃のパブリックコメントを経て、4年ぶりのマンション標準管理規約改正になるはずでしたが、なんと、パブリックコメントが一向に開始されません。
それどころか、改正案が発表された途端、マンション管理業協会や日本マンション学会、全国マンション管理組合連合会ほかあらゆるマンション管理団体、そしてマンション管理組合自体からも反対声明が一斉に噴出してしまいました。
各団体の反対意見は共通です。標準管理規約改正案からコミュニティに関する条項を削除することに対するものです。
少し補足しますと、マンション管理組合は本来、共用部分の財産管理団体の側面があり、本質的にはコミュニティ(住民活動の活性化)活動は目的外となります。
しかし、良好なコミュニティ形成は財産管理にも好影響を及ぼすという意図で、過去の標準管理規約の改正にて管理組合のコミュニティ関連支出を認める規定が置かれています。
ところが、今回の見直しで、法的解釈の要請からこのコミュニティ条項を削除し、それぞれの管理組合の判断で運用する方向性となることに大反対のオンパレードというわけです。
そしてそれに拍車をかけたのが総務省の各都道府県に対する通知ではないかと思います。
これは、今年5月12日に発表された「都市部におけるコミュニティの発展方策に関する研究会」の報告書を基に、コミュニティ活動を行う管理組合に対し、自治会同様に行政支援の対象とするよう求めており、管理規約の規定にかかわらず、合意形成によるコミュニティ形成を肯定的に捉えているのです。
つまり、国の中でも国交省と総務省で足並みがそろわず、マンション管理業界では国交省の対応を頭でっかちな非現実的な対応と評価されてしまったということです。
この勝負、完全に総務省に軍配ですね。
国交省の検討会(マンションの新たな管理ルールに関する検討会)はあくまでも原点回帰を原則とし、個別運用を進言する大人の対応をしたのだと思いますが、明らかに空気が読めない対応でした。
個人的には、コミュニティ条項が標準管理規約から削除されようがされまいが、あくまでも「標準(参考)」にする管理規約という位置づけですから大勢に影響がないと思うのですが、管理組合の現場は想像以上に混乱するのかもしれませんね。
それよりも「第三者管理」に対する議論が完全に埋没してしまったことに空しさを感じます。これも大きな変換点だと思うのですが。
まあ、恐らくこのまま標準管理規約改正案をまとめることは難しいでしょう。
国交省も今回は失策を認め、1から改正作業をやり直した方が賢明だと思いますね。
4月24日付のコラムで私が示唆した「また放置され、今年中に標準規約の改正が間に合わない・・・」懸念、何となく現実になるような気がしてきました。
[2015年8月10日]