マンション共用部分の地震保険がかなり一般的になってきた印象があります。
ちなみに平成26年度末現在の火災保険への付帯率は専有部分69.5%、共用部分37.1%だそうです(大手4社の集計値)。
ところがこの地震保険、実はよくわからないという声が多く、「実際に損害が発生した場合、本当に保険金がもらえるのか?」「マンションが倒壊することなどほとんどないのに保険料が無駄じゃないか?」などという疑問も多いです。
そこで今回は保険金の支払い基準を中心に、地震保険についてまとめてみます。
まず、地震保険の基本的な仕組みとして、モノの損害を補償する火災保険とは異なり、実際の損害を補償するわけではありません。
地震の損害の程度を「全損」「半損」「一部損」の3段階に区分し、判定により保険金が一定割合で支払われます。(なお、2017年1月から4段階に細分化される予定です。)
つまり、実際の損害額に差があれ、判定が同じ区分であれば保険金支払いは同じということです。
では、具体的にどのような手順で損害の判定が行われるのでしょう。
鉄筋コンクリート建物の場合、まずは建物全体の沈下または傾斜の程度を測定します。建物全体に1mを超える沈下や約1.2°を超える傾斜があった場合、全損の認定が行われます。
確かに、さきの熊本地震でも見た目はそれほどでもない被災マンションの写真を見ましたが全損認定を受けていました。
そして全損認定に至らなかった場合は、主要構造部である柱や梁などの損傷状況を総合的に確認し、全損・半損・一部損の認定を行うようです。
したがって、仮にエレベーター等の高額な付属設備が壊れたとしても、主要構造部の損傷認定次第では保険金が支払われないということがあり得ます。(あくまでも可能性の話であり、エレベーター損害と主要構造部の損害には相当の相関関係があると認められています。)
このように、迅速な保険金支払いを実施するため比較的シンプルな判定が行われている地震保険ですが、東日本大震災では地震保険加入マンションの9割以上が保険金を受け取っており、復旧に一定の寄与が認められているわけですから、来たるべきその日のため、加入は不可欠であるというのが私の認識です。
[2016年6月17日]