分譲マンションの「シェアハウス」問題はご存知でしょうか?
これは、マンション住戸の1室を細かく仕切り、10人近くに賃借して運用するという割と最近の問題です。
以前、新宿のテレホンクラブで火災がおき、大惨事になった事件がありましたが、イメージはあの事件に近いと思います。
1室を細かく仕切ることは建築基準法に違反することになるため、火災発生時の問題に加え、分譲マンションではゴミ出しなどの生活マナーや騒音問題にも深刻な被害を及ぼすものと考えられます。
仮に分譲マンションの1室でシェアハウス化が行われていたとしたら、管理組合としては当然排除の手段を取ると思います。
ところが、今般、裁判所にシェアハウスとしての使用禁止を求める仮処分申請を行った管理組合が申請を却下されるという事態が発生しました。
平成25年11月5日付マンション管理新聞によれば、裁判所は、シェアハウス化の後に管理組合が実施した管理規約の変更が、区分所有者の「特別の影響」に該当するため、使用禁止は請求できない、としたのです。
区分所有者はリフォーム工事に関し、事前に理事長の承認を得ておらず(規約違反)、リフォーム後の住戸は法令違反の状態にあるにも関わらず、管理組合の「共同の利益」よりも約1000万円のリフォームを施した区分所有者の経済的不利益の方が大きいと判断したことになります。
シェアハウスとしての使用は、
「1世帯が使用する場合と比べて、居住者の数が若干増加するというものにすぎない」
「専有部分に違反があっても、全体の安全性を弱めているなど他の区分所有者の生命身体の安全に直接の影響があるものとは認められない」
ということのようです。
はっきり言って、この判断はかなり疑問が残ります。
判断には、このマンションの特性(立地的に利便性が高い、規約で事務所使用が認められているなど)が大きく影響しているような気がしますが、それにしても、「共同の利益」が軽視されているという感が否めません。
(シェアハウス禁止という)規約の変更が無効だという手続き論に言及するなら、リフォームの事前承認を取っていないという手続き違反はどうなるのでしょう?
裁判所は「法令違反の事実が確認できれば原状回復を求めることはできる」と言っているそうですが、これって屁理屈ではないのでしょうか?
こんな状況を認めると、不法者にとって専有部分のリフォームは「やりたい放題」になってしまいます。マンション管理の現場を全く見ていない机上の判断と言わざるを得ないです。
あくまでも新聞記事からの考察ですが、とても残念な処分です。管理組合には抗告(不服申し立て)をしてもらいたいと私は思います。
[2013年12月18日]