前回のコラムでは東日本大震災による分譲マンションの被害状況の概観を取り上げました。では、被害に対する地震保険の補償はどうなるのでしょうか。
今回は、震災における保険金の補償見込み額について、日本損害保険協会や大手損保会社へのヒアリング状況をお伝えします。
震災では大破や中破は少なかったものの、軽微な損害は多数発生しています。しかし、給・排水管の破損や高架水槽、エレベーターの破損に対して保険金は払われないそうです。
地震保険は「マンションの基礎・柱・梁・屋根・外壁など主要構造部に一定以上の損害が生じた場合」に保険金が支払われるもので、設備関係の補修費については適用外ということです。
また、玄関ドアやサッシといった主要構造部以外の建物の一部や、駐輪場などの付属施設についても原則として適用外になります。
したがって、保険金の対象になるのは外壁のひび割れやタイルの剥離・剥落といった被害ということになり、今回の震災では、保険金の支払いは限定的なものとなりそうです。
では、津波による被害についてはどうなるのでしょう。
地震保険は、損害の状況を3段階(全損、半損、一部損)に分類し、各段階に認定された場合にそれに応じた保険金が支払われるという大変シンプルなシステムを採用しています。
実損害額に対する保険金の支払いではないのです。
マンションの場合、一棟ごと流されるということは考えにくいため、床上浸水の被害が考えられます。地震保険では床上浸水した場合にようやく保険金支払いの対象となり、一部損扱いです。保険金は契約金額の5%が支払われるに過ぎません。
他にも、マンション内の施設によりケガや被害を負ったとしても、地震発生の場合はそもそも賠償責任が発生しないため、その被害は施設賠償責任保険の対象とならず、保険金は支払われません。
地震保険はこれからますますクローズアップされることかと思いますが、なかなか万能とは言いがたいです。制度の見直しが望まれるところです。
[2011年4月25日]